橋本 恭伸 Yasunobu Hashimoto
株式会社Digika 代表取締役社長CEO
今回のスクスクでは、圧倒的な計算力を身に付けられる暗算学習プロダクト「そろタッチ」を展開される(株)Digikaの代表取締役社長CEO 橋本恭伸さんにインタビューを実施しました。そろばんの仕組みをタブレットで応用した新しい暗算学習法により、圧倒的な計算力を身に付けることで子ども達が得られる本質的な能力とはなんなのか、ぜひご一読ください。
「そろタッチ」を通して提供したいこと
松原:まずは「そろタッチ」についてお聞かせください。
橋本:
株式会社Digikaは「人々の可能性を最大限引き出す」をミッションに掲げ、「ひとりでも多くの能力開発を実現する」ということをビジョンとして活動していて、新しい暗算学習法「そろタッチ」というサービスを通じて、全社員がそろタッチに関わっており、可能性が無限にある子ども達の能力開発に情熱をこめて日々活動しています。
そろタッチはそろばん式暗算という形で学習しており、この学習法はアプリを通じ多くの方に提供しています。そろタッチで暗算を学ぶと、たとえば、5歳児がこの計算を暗算で解けるようになります。さて、松原さんはこの問題を暗算で解けますか?
松原:・・・いえ、解けないです!
橋本:
ほとんどの場合、そうですよね(笑)。
でも、この問題は5歳児でも解けるようになります。5歳児なのに「そろタッチ」で得た計算力は同年代の子どもだけでなく大人をも凌駕します。「そろタッチ」を通して学習すると、子どもたちは楽しく学びながらも、大人の常識を覆すようなレベルに達することができます。単純な計算力においては、自分の親を圧倒することができます。
この「能力開発」という機会を提供することで、子ども達は経験や努力によって「自分は成長出来るんだ」という考え方を手にすることができます。つまり、私達が大事にしているGrowth Mindset(グロースマインドセット)を獲得するとともに、Perseverance(パーサヴィアランス:やり抜く力)も身に付けていきます。
私は子ども達の情熱の向かう先は、受験でも、スポーツでも、芸術でも何でも良いと思っています。その『情熱』の土台に、Growth Mindset と Perseverance がなると考えています。
弊社のミッションにもある可能性を最大限引き出す社会を実現する上で障害になるのはGrowth Mindsetの逆のFixed Mindset(フィックストマインドセット)や「固定観念」で、特に子供に対して言うと「大人の固定観念」が邪魔することが多いと思っています。
少し私自身の話をしますと、私は岡山県備前市の出身ですが、例えば「こんな田舎出身なんだからあなたに〇〇が出来るわけがない」というのはよく聞く話です。これは大人が子ども達の可能性に蓋をしてしまっているということです。
話をそろタッチに戻しますと、そろタッチはタブレットで簡単に遊べる「アプリ」です。アプリゲームで遊んでいたら、自分の子どもがとんでもない計算力を身に付けてしまって親は「わおっ!」と驚くわけです。親にとって、自分達が通ってきた道とは全く違う学び方があるんだ、こんなやり方で成果が出るんだ、と強烈に感じる瞬間です。
この経験を通して、親自身もFixed MindsetからGrowth Mindsetに変わる瞬間があります。子ども達だけでなく、大人達が持っている固定観念を壊すということはすごく社会的に価値があると思っています。
保護者は中学受験に対して期待を込めて「そろタッチ」を習わせる傾向にありますが、私達はそれだけを求めてはいません。もちろん圧倒的な計算力が身につきますので受験でも大いに役立ちます。
しかし、これからの社会は『ピラミッド型の椅子取りゲーム』ではなくなります。これから先は『その子達の色にあわせた椅子』があって、『その子達の色にあわせた社会的ミッション』が生まれていくと思います。私達もすでにそういう社会に身を置いていますが、子ども達の世代はもっとそうなっていきます。
多くの子ども達が『その自分色の椅子』でそれぞれ成長して社会全体が豊かになっていくためにはGrowth Mindset(グロースマインドセット)が必要で、多様性を認める社会においてもこの思考はとても重要だと思っています。
「そろタッチ」の開発背景
松原:親を越える圧倒的な計算力を通じて、子ども達の自己肯定感を高めることにも繋がるということですね。そもそも「そろタッチ」を開発した背景は何だったでしょうか。
橋本:
いきなり「そろタッチ」を開発したわけではなく、実は町のそろばん教室から「そろタッチ」が生まれました。
「そろばん教室」を立ち上げたのは当社の創業者であり現代表取締役会長でもある山内千佳です。山内は外資系金融業界で働いているときに、すごい計算力をもった各国の優秀なトレーダーの中で揉まれ、概数を瞬時に把握する能力はそろばん熟練者が世界最速・最強だと実感したそうです。金融業界はだいぶ前からITを駆使する世界でしたが、そこに暗算力を掛け合わせることの価値がすごく高かったそうです。
それであればと、山内は自分の子どもにそろばんを教えたところ、驚くほどの暗算能力を身に付けました。「こんなにも素晴らしいものは世の中に広げなきゃいけない」という思いで、一念発起して「そろばん教室」を創業するに至りました。
そろタッチの開発の話をする前に少し「計算方法」の話をさせてください。意外と知られていませんが世界には様々な計算方法があり、大きく分けると「ひっ算式」か「そろばん式」に二分されます。
計算のオリンピックというものがありまして、フリースタイルで計算の正確さやスピードを競い合います。フリースタイルなのでどんな計算方法を駆使ししても良く、色々な計算方法がありますが、参加した大会ではそろばん式暗算が上位を占めていました。
たとえばプールの自由形に目を移すと、みんなクロールで泳ぎますよね。それはスピードを競う競技種目において、圧倒的にクロールが早いからです。計算のオリンピックも同じで、そろばん式暗算が早くて正確だから使います。
そして、公教育に目を向けますと計算は「ひっ算式」です。これは「そろばん式」が難しい計算方法だということを示しています。実は、「そろばん式暗算」が出来る人は一部でして、例えば私たちが運営していたそろばん教室では4年間そろばん教室に通っても上位10%しか「そろばん式暗算」は身に付かなかったんです。
少し遡りますが、山内がそろばん教室を立ち上げた2009年当時は、もはやそろばん教室が世の中的に求められていない時代でした。たとえば、将来銀行に就職しても直接的にそろばんスキルは求められません。それこそ計算はPCが出来るのでPCスキルがあった方が良いですし、時代で言えばWEBスキルがあった方が良いという風潮で、つまり「テックの力」に重きが置かれていました。
でも、よく考えなければいけないのは、テックを扱うのは「人」だということです。優れたデバイスやソフトウエアと、私達が持っている「情報処理能力」の掛け算がアウトプットになります。テクノロジーは常にバージョンアップされていますが、いくら優れたテクノロジーであっても人を介したときに、アウトプットが1か100か1000か、使う人の能力によって大きく変わります。これから先、情報があふれる社会において優れた情報処理能力、つまりワーキングメモリ(※1)を鍛えることはとても重要です。
ですので、そういった様々な背景から「そろばん式暗算」をより確実に身に付けられるアプリケーションの「そろタッチ」を開発することになりました。
松原:「そろばん式暗算」はそもそも身に付きづらいものだったということに驚きました。ところで、橋本さんが株式会社Digikaに入社されたのはどういった理由からでしょうか。
橋本:
私自身、「数字」の大切さを自らの仕事などを通じて実感しています。私は「そろタッチ」を世界に広げていくことを通して、教育界が抱える課題をテクノロジーの力によって解決するとともに、新たな学びのスタイルを広げていくというミッションを追ってこの会社に参画しました。つまり私の役割はビジネスの拡大です。
実は本日同席した当社の森本も、そろタッチ教室の生徒のお母さんでした。いまはマーケティング担当の一員として当社で活躍してくれています。このように、山内がつくった「教室」に通っていた子どものお母さんが多く働いていて、そろタッチの良さを広げたいという想いをみんな強く持っています。
※1 ワーキングメモリ
ワーキングメモリ(working memory:作業記憶、作動記憶)とは、短い時間に心の中で情報を保持し、同時に処理する能力のことを指します。
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