なぜ、「そろタッチ」だと「そろばん式暗算」が身に付くのか。
松原:なるほど、多くのスタッフの方のお子様が通われていらっしゃったんですね!一つ疑問がありまして、なぜ「そろタッチ」だと「そろばん式暗算」が身に付くんでしょうか。
橋本:
有難うございます。まず一つ目のポイント、これが特許技術の「あんざんモード」なんですが「頭のなかでそろばん(珠)のイメージをする」ということです。実はこれが出来る子どもとそうでない子どもで、そろばん式暗算が身に付くかどうか、に結び付きます。この仕組みを通じて情報処理能力、つまりワーキングメモリが強化されます。補足ですが、このワーキングメモリを後天的に鍛えたら学力にものすごく好影響を及ぼすということも科学的に証明されています。
2つ目のポイントとして、そろばん式暗算を両手で行うということ。これを行うことで時間の節約と、ワーキングメモリの効率化が期待できます。
3つ目のポイントが「データの力」です。子ども達が昨日1日24時間で「733,392問」も解いてくれていて、今年の2月末で総解答数は「5億問」を越えました。サーバーにこれだけの解答が集まっているので、個人の得手不得手にあわせて最適な問題を提供することが出来まして、より効率的な学びを提供することが可能となります。先々月に、実際の生徒から個人別の最適な学びが提供できていると感じられる手紙が届いたのでご覧ください。
この3つのポイントを備えたそろタッチを通じて暗算名人がたくさん生まれてます。直営教室における過去の調査では、そろばん式暗算上級の習得率が2年未満通って62%(そろばん教室時代は4年通って10%程度)でした。今では教室生とネット生とを合わせて生徒が8,000人を超えるほどになりました(2022/6時点)。
松原:ゲーム感覚で楽しく勉強出来ているんですね、素晴らしいですね!ところで「38%の子ども達」がそろばん式暗算を身に付けられなかった理由って何なんでしょうか。
橋本:
はい、その答えは明確でして、「そろばん式暗算」の平均習得期間は20カ月です。早い子は数カ月で到達しますし、少し遅い子は3年以上かかります。これは一つの目安の期間ではありますが、多くの場合「そろばん式暗算を身に付けるまで続けられなかったことが理由となります。他には適齢期をすぎてしまいイメージ力が育たなかった場合もあります。
62%が到達したと先に述べた上級の暗算力の入口は「2桁8口」や「3桁4口」の足し引き、3桁掛ける1桁の掛け算や4桁割る1桁の割り算ができるレベルとしています。もちろん途中で辞める子も着実にそのレベルの前までの暗算力は身についてます。
そろばん式暗算により、脳内の「視空間性ワーキングメモリ」(※2)が向上するという研究論文が多数あります。
イメージしやすいようにお話ししますと、頭の中に情報を処理する机が広がっていてその机の大きさが視空間性ワーキングメモリの大きさというイメージです。
情報化社会なので情報はたくさん入ってきますが、机が小さいと情報が載りきらないのでアウトプットが限られます。机が大きいと情報がたくさん載るので様々なアウトプットが出てくる。
※2 視空間性ワーキングメモリ
言語的短期記憶と中央実行系の機能を合わせて、言語性ワーキングメモリと呼び、視空間的短期記憶と中央実行系の機能を合わせて、視空間性ワーキングメモリと呼びます。 ワーキングメモリは、思考と行動の制御に関わる実行機能(executive functions)の一つであると考えられています。
松原:仕事でも「視空間性ワーキングメモリ」のある人とない人では、活躍の度合いに差がある気がしますね。
橋本:
そうですよね。そしてこのワーキングメモリトレーニングは認知能力の向上にもつながっているといわれています。
2025年には認知症の人の数が700万人にもおよぶといわれていますが、実はこのワーキングメモリトレーニングは認知症にも効果があるかもしれないとのことで、認知症のリハビリに精通されている先生方にご賛同いただき、昭和大学医学部と協働で特定臨床研究を実施しています。
第一子の誕生がグローバルな視点で教育を考えるきっかけに
松原:様々な価値を提供されてるんですね。話が少し変わりますが気になることがございまして、橋本さんが教育業界に入られたきっかけを教えていただけますか。
橋本:
はい、少し遡ってお話させていただきます。
生まれも育ちも岡山だったということもあり、大学に進学するまではけっこう閉鎖的な感じだったなって思ってます。そうした経験から、人も情報も集まる東京に行きたいと思い東京に出てきて、大卒でマイクロソフトに入って、MBAも取得しました。その後、楽天に転職し、Rakuten Indonesia Country Head として海外に楽天の事業を広めることを現地で指揮していました。
私の大きな転機は、子どもが産まれたことですね。誰にとってもそうかもしれませんが、私の人生にとってもすごくインパクトがありました。妻は私がMBAを取得する時に出会った外国籍の方で、現地に身寄りもなければ何も関係のないインドネシアに二人で引っ越して、そこで子どもを授かります。
その後子どもの将来の学びについて考えた際に、日本語学校、中華系の学校、オーストラリアの学校など、日本にいるうちではまったく考えもしないような、多くの選択肢を視野に入れながらこの子の教育を考えなければいけない、という強烈な当事者意識をもちました。国際社会のなかで成長していくにあたって、その子にとってなにがいいことなのか、ということを親として考えざるを得なくなりました。
その時に思ったのが数字の大切さです。
私自身ビジネスにおける数字の力というのを本当に感じていて、インドネシア人でも、英語がわからない人でも、数字は確実に伝わるわけです。数字の力というのは世界とつながるうえで裏切らない力であるし、大きな価値になります。子どもにも「数字が嫌だな、算数がやだな」、と思ってほしくないとずっと考えてました。
また、私はテクノロジーの会社にいたので、これからテックが逆行することはないと思っていまして、ますます「数字の力」は大事だなと思うようになりました。そんな考えを持って子育てをしようと思っていた矢先、残念ながら当時率いていた事業をインドネシアから撤退して日本に戻ることになりました。その直後に山内に出会いました。
私自身、子どもの頃にそろばんをやっていたので計算には自信がある方でして、そこから育まれたGrowth Mindsetが私のビジネス人生をずっと支えてくれていたと確信していました。数字の大切さを痛感していた時に、そろばん式暗算がもっている課題をなんとか解決しようとしている山内達の活動に共感しましたし、山内からも一緒にやらないかと声をかけてもらったので、私もそろタッチにかけてみようということで参画するに至りました。
松原:そのような変遷があったんですね。ちなみに、お子様もそろタッチはやられていらっしゃるんですか?
橋本:
はい、そろタッチをやっていますよ。おかげさまで、私の計算力を長女が越えまして(笑)。私もCEOという立場なので大人の中でそろタッチを一番やってるユーザーの一人なのに、私がかけた時間の半分くらいで、私の計算力をすっと抜いていっちゃいました。親としてとても嬉しい瞬間でしたね。
子どもは大きな可能性を秘めているなって本当に思いましたし、自分の子どもに「どうしても敵わないな」というところまで成長してくれることはとても嬉しいことだなと思いました。
能力開発をDXするSaaS企業へ
松原:ところで、そろタッチが小学校に提供されることはないんでしょうか。
橋本:
導入させていただいている学校もあります。東京都内でいうと、中野区にある私立小学校さんのアフタースクールにそろタッチが導入されてます。講演の機会をいただいて、ご興味をもっていただいて導入に至りました。そろタッチを通じて計算力を身に付けることが出来ますので、もちろん受験にも資するものですので重宝いただいてます。
ところで、私達は「学習指導要領」に沿った軸ではなく、たとえば公文さんと同じように「能力開発」という軸でプロダクトを展開しておりますので、国内だけにとどまらず海外にも展開しやすいです。そういう点ですと、経済産業省にお世話になっております。経済産業省は「未来の教室」というプロジェクトをやっていて海外展開等支援事業も行われています。その第一陣にそろタッチも選んでいただけて、インドネシア、マレーシア語のローカライズを行うことが出来ました。
松原:なるほど。それでは最後に、先々見据えているロードマップを教えていただけますでしょうか。
橋本:
はい、現在「能力開発DX」を展開しておりまして、そろばんを使わずにテクノロジーを使ってもっと高い計算能力の開発を行っています。この図のように「そろタッチ」は未就学児と小学生に対して計算能力に特化して行っています。
「そろタッチ」は主に5歳~8歳を学習開始の適齢期としており、生徒は8,000人以上、教室は国内外あわせて190箇所に及んでおり、海外は9か国・地域に展開しています(2022/6時点)。今後国内外にもっともっと広げていきたいと思っています。そして、これから先は算数や数学、それこそ大人の認知能力を向上させることにも挑戦していきたいと思っています。たとえば、iPhone12や13が出てバージョンが一つ上がるとワクワクされると思いますが、そもそもご自身の情報処理能力の向上、自分の可能性の広がりもワクワクしませんか?と問いかけたいですし、そこに大きな機会があると思っています。そして先ほども申しましたが、大学と共同研究で認知症予防も行っておりますので、子どもだけでなく大人にも能力開発の機会を提供していきたいと思っています。
最後に、繰り返しになってしまいますが、やはり子どもの学びの土台となるのは、Growth Mindset、Perseveranceです。そのマインドを獲得することを前提にし、計算能力だけでなく、総合的なラーニングプラットフォームを提供していきたいと思っています。
コメントを残す