【めといろ保育園】「育児」と「仕事」の両立を願って

東京メトロめといろ保育園

「子育て」の環境作り

松原:桶田さんが実際にお困りになったことを踏まえて「めといろ保育園」を開設されたとのことですが、お子様が大きくなられてまた違った課題がおありになるのではないでしょうか。

桶田:
そうですね、子どもはいま小学校5年生と2年生で、おっしゃられるように小学校に上がるとまた生活が変わります。たとえば、ウチの場合ですと、小学校1年生のころから学童に預けていたんですが2年生になると子どもが「学童がつまらないから行きたくない」と言い始めたんです。学童に行かない日は早めに帰ってきますので、そうなると保育園に預けていた頃よりも自分の時間が少なくなってしまい、仕事との両立が難しくなってしまいました。

今では当社も職種によっては在宅勤務が出来るように整備されていますし、幸いなことに夫も在宅勤務のため夫婦で分担して子どもの世話ができるので、自分の時間を確保することができるようになりました。

一方で、当社内に目を向けますと当社特有の課題があります。鉄道現業で勤務する社員の場合、当然のことながら宿泊を伴う勤務形態もあります。将来的には、そうした社員のために「学童」の展開も検討していき、夜間保育や24時間保育などを通してより安心して働き続けることができる環境を作っていければと思っています。

松原:実現できると良いですね!さて話は変わりますが、子どもに寄り添うことや自己肯定感を大切にするなどのビジョンで保育園を展開されていらっしゃいますが、桶田さんご自身のお子様が小学校に進学する際、公立か私立かで進路を迷われましたか?

桶田:
そうですね、そのあたりは少し考えましたが、結果的には公立の小学校に通ってます。

子ども達が自分自身で考えられるようになって、もし中学で私立を選択するようでしたら本人達の意思を尊重したいと思っています。実はウチの子も(※3)プログラボに通ってまして、ロボットプログラミングにとても興味を持っています。「部活動でもロボットプログラミングをやりたい」ということなので部活動を優先して私立を探してみようかと考えています。

『一人一人に寄り添った教育』という観点で言いますと、もちろん公教育は変わってきてますし、学校の先生方も大変良くしてくださるのですが、先生もお忙しいですし全体最適を取らざるを得ないのかなと思っています。また、幼稚園や保育園と比べてしまうと、小学校には文科省の定める教育方針がありますし、どうしても先生方は子ども一人一人に寄り添うことは難しいと思います。

たとえば、小学校だと、誰かと少し喧嘩になったとして「〇〇さんから叩かれた」という結果の情報しか伝わってこないんですよね。そこに至る背景などがわかれば、子どもとどう接して導けば良いかも考えられますが、保育園と比べるとそういった学校生活を細かく共有していただくことが難しいですよね。小学校は「過程」が分かりづらいなと思っています。最近では、(※4)イエナプランの学校を見ると良いなと思ったりしますね。

※3 「プログラボ」とは東京メトロが運営する「ロボットプログラミング教室」である。

プログラボは、ミマモルメ(阪神電鉄100%出資会社)と読売テレビが起こした事業で、地域に根ざす2つの企業が、日本のICT教育の遅れに危機感を抱き「未来を担う子ども達の、夢を実現するチカラを育む」を理念として立ち上げたロボットプログラミング教室であり、東京メトロはそのフランチャイジーとして同教室を展開。

関連記事:「東京メトロが『教育』をやる理由」
https://schoolschool.jp/2022/05/proglab/

※4 イエナプラン教育とは、子ども一人ひとりの個性を尊重しながら自律と共生を学んでいく教育を指す。

関連記事:「緩やかに、穏やかに生きる」
https://schoolschool.jp/2022/05/iena-plan/

松原:これからは一人一人が個性を発揮して好きな生き方を模索する社会になりますよね。イエナプランをはじめ、私たちの世代が受けてきた教育とはかなり様変わりしてきました。

桶田:
そうですね。誤解を恐れずに言うと、私たちの世代はある意味で「勉強は苦行」のように扱われていたんじゃないかなと思います。偏差値至上主義的な風潮も強かったので、極端に言うと、テストで良い点を取って良い大学に行って良い会社に入れば成功したと言える、みたいな固定観念めいたものがありましたよね。

一方で、親となっていざ子育てをしてみると、保育園にせよ、プログラボにせよ、「楽しいから学びが発展する」という考え方が基本になっていることが分かります。楽しいとか悔しいとか自然な感情表現ができる環境や、子ども自身が没入できる環境をいかにして作れるか、こうした整備に挑戦することが、子どもにとって良い教育環境につながるのではないかなと思っています。

松原:とても共感します。保育士の資格も持たれていらっしゃいますが、教育者としての知見は家庭でも活きていますか?

桶田:
はい、と言いたいところですが、家の中ではそうでもありません。(笑)

親としての感情も相まって、理想通りに子どもと接することが出来ないことがあります。やはり自分の子どもともなると、自分の過去の経験をなぞってしまいがちです。

でも、そうやって親の経験の中で子育てをしてはいけないとわかっているので、子ども達には出来るだけ多くの事に触れてもらい幅を広げてあげたいと思いますし、興味のあることを見つけてもらいたいと思っています。

楽しみながら学ぶ、学ぶことに楽しさを感じて意欲を持っていく、その先に解決したい課題や取り組みたい問題が見つかってそれに向かって努力していく。そんな学びが自走できる環境を作ってあげられると良いなと思います。

松原:親としては子どもに様々なきっかけを与えることは重要ですよね。

桶田:
そうですね。でも、どこかに連れて行ったとしてあまり興味を持ってくれないこともありますよね。これは親がちゃんと興味を持たせてあげられるように子どもに伴走できなかったからだ、と反省しました。

たとえば、美術館に一緒に行ったとして、子ども達は芸術をどう楽しめば良いか分からない場合もありますから。そういう時は「芸術は自由に楽しんで良いんだよ、たとえば…」というように、親が声をかけてあげたり、子どもに寄り添って一緒に体験してあげると良いんだと思います。そこには、親側の価値観のアップデートも必要かもしれないですね。

保育事業に懸ける想い

松原:本当にそうですね、子どもに経験を提供するだけではなくて伴走できると尚良いですよね。さて、それでは改めて「保育園事業」を通して実現したいことをお聞かせください。

桶田:
はい。未就学児であれ就学児であれ、「子育て」と「仕事」を両立するうえで様々な困り事があると思います。それでも、子育てする大人自身も自分らしく生きることを追求してほしいと思っています。社員が安心して働き続けられるような支援をしていきたいと思っていますし、個々人の能力が最大限発揮できるような環境をつくっていきたいと思っています。そして、ゆくゆくは沿線にお住いの方にも同じような価値を提供できる事業にしていきたいと思っています。

東京メトロ沿線は首都圏ということもあり、日本全体が人口が減っている状況であっても転入者も多いですし働き手が多いです。一方で、少子高齢化のトレンドや、テレワークも増えているため鉄道利用者が減ってしまうことが懸念されます。ですので、今まで以上に沿線エリアをより暮しやすい街にしていきたいと考えています。

「保育園に預けられる」「質の高い学びが提供される」ですとか、”子育て”という観点で住む場所を考えることもあると思います。東京メトロ沿線の付加価値を「保育」で提供していけるといいですね。

また、個人的な感情ではありますが、これから先、乳幼児の子育てを控えている方には、私が経験してきた辛さや孤独感、息切れみたいなものを感じてほしくないと切に思っています。企業主導型保育事業なので、対象者はほぼ社内従業員向けになっていますが、「めといろ保育園」はもっと対象を広げて社外のより多くの子育て世代に広めたいと思っています。

私は、ロボットプログラミング事業と保育事業の両方の立上げに関わっていますが、この教育事業を通じて「人を育むこと」の尊さを感じました。ロボットプログラミングや保育園だけではなく、今後は、子ども個人を尊重し、子どもたちが活き活きと放課後を過ごせるような「学童事業」を展開できると良いなと思っています。

最後になりますが、今回、このようなインタビューの機会をいただきまして有難うございました。

改めて保育事業のことや、自分自身の教育観などを振り返ることが出来て新たな発見につながりました。これからも情報収集や様々な関わり合いを大切にして、子どもたちのために何ができるのかということを考え続けながら事業を発展させていきたいと考えています。

「めといろ保育園」
めといろ保育園は、東京メトロが設置した企業主導型保育施設です。東京メトログループの従業員だけでなく、地域にお住まいの方もご利用いただけます。
めといろ保育園イラスト

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松原 吉輝
(株)weclip共同代表。2児の父で教育に深い関心がある。2016年9月にGIVE&GIVE(株)を設立し、EC運営代行、ECコンサルティングサービスを軸に事業を展開する。また2021年に新規事業開発・事業プランニングを専門で行う会社(株)HItoHIを設立。