桶田 麻衣子 Maiko Okeda
東京地下鉄株式会社(東京メトロ)
企業価値創造部 新規事業推進担当
保育士資格保有
今回のスクスクでは、東京メトロ(東京地下鉄株式会社)が運営する教育サービスの1つ保育事業「めといろ保育園」についてお話を伺いました。また、本事業の事業構想に至った背景や本事業にかける想い、さらにご自身も二人のお子様を育てる桶田さんの教育観についてもお伺いしました。
企業主導型保育事業「めといろ保育園」
松原:先日は東京メトロさんが運営するロボットプログラミング教室「プログラボ」について伺わせていただきました。今回は、東京メトロさんが保育事業を行う理由をお聞かせください。
桶田:
私たち東京メトロは、「東京を走らせる力」を企業理念として、「東京の都市機能を支え、東京に集う人々の活き活きとした毎日に貢献すること」をお客様にお約束しています。
保育に関する事業を企画していた10年前は「待機児童問題」が大きな社会課題となって表れ始めていた時期でした。当社の沿線の中でもこの待機児童の問題を抱えている地域が多くありました。こうした背景からも保育事業を行うことは沿線にお住いの方々の活き活きとした毎日に貢献することにつながりますので、必然だったんだと思います。
また、当社の女性社員の働き方という観点でも、全従業員をカバーしきれていないので福利厚生とまではいかないんですが、保育園を活用してもらって働きやすい環境、ストレスのない環境を作るという側面もありました。
松原:有難うございます。実際に行われている保育事業についてお聞かせください。
桶田:
はい。東京メトロが行っている保育事業は2つあります。
1つ目は、鉄道事業の一環として沿線の高架下に保育園を建てて、(※1)認可保育園や認証保育園の運営事業者様にクライアントとして入っていただく形で保育所を開設する事業です。
2つ目が、私が直接担当している事業で、グループ会社社員の仕事と育児の両立を支援するために2019年7月に(※2)企業主導型保育事業として『めといろ保育園』の開設と運営を行っているものです。自社の従業員の子どもだけでなく、空き枠は近隣の住民の方にご提供しています。
今回お話させていただきたいのが2つ目の「めといろ保育園」についてです。
江東区と江戸川区に2カ所展開しておりまして、当社の家族寮の1室を改築したり、近くのテナントをお借りして保育園にしました。「めといろ保育園」の運営責任は当社にありますが、保育園の運営はしっかりとしたノウハウを持つ「 HITOWAキッズライフ株式会社」に委託しています。対象は、待機児童になりやすい6カ月~2歳の子どもたちを受け入れています。
「めといろ」という名称は、「めとろ」と「といろ」を組み合わせたもので、“十人十色”の個性を育みたいという想いを込めました。また、東京メトロの9つの路線カラーをモチーフにしたロゴは、各カラーが少しずつ重なり合ってさらなる個性が生まれていくこと、そしてまだ見ぬ10番目のカラー、つまり新たな個性を育てるという保育への考え方を表現しています。
この事業を行うにあたり、私たちが大切にしたいことが3つあります。
まず一つ目が、『ひとりひとりを大切にした「おうち」のような保育施設』です。初めて保育園に子どもをあずける方もいらっしゃいますので、子どもと親、双方の立場に立って安心して子どもを預けられるような「おうち」のような保育園を目指しています。
2つ目が、『「ひとりひとりが輝く保育」自己肯定感を育む保育』です。当園の定員数は9~12人とそこまで多くはありません。だからこそ、細かいところに目の行き届いた保育が出来ると思っており、たとえばご飯やお昼寝、遊びも子ども一人一人に合わせて自主性を尊重した運営を心がけています。
3つ目が、『送迎時間0分!家族住宅の中にある保育施設』です。「企業主導型保育事業」ですから、当社の従業員が負担なく保育園に預けられるエリアを選定して保育施設を設置するようにしています。
※1 認可保育園と認証保育園の違いは、「国が定める基準をクリアした保育施設」か、「国の基準ではカバーできない保護者のニーズを埋めるために、東京都が独自に定めた基準をクリアした保育施設」という違いがあります。
※2 企業主導型保育事業とは 企業主導型保育事業は、平成28年度に内閣府が開始した企業向けの助成制度です。 企業が従業員の働き方に応じた柔軟な保育サービスを提供するために設置する保育施設や、地域の企業が共同で設置・利用する保育施設に対し、施設の整備費及び運営費の助成を行います。
育児と仕事に追われて「息切れ」する日々
松原:「企業主導型保育事業」ということで社員の方に向けた環境整備という色が強くあるんですね。「めといろ保育園」を行うに至った背景を教えていただけますか。
桶田:
私が鉄道事業から新規事業開発の部署に配属された時に、「日常の困り事を解決できるような事業を考えてほしい」と言われたんです。そこで、日常の困り事をまずは自分に置き換えて、「私自身が困っていることって何だろう」というところから考察を始めたんです。
ちょうど私は育休から復職した時期で当時子どもの年齢は4歳と1歳、世の中でもちょうど待機児童が問題になっている時期でした。そのため、1歳児クラスを選択すると自分の子も待機児童になってしまう可能性がとても高かったので、やむなく生後8ヵ月くらいに0歳児クラスから保育園に入れることにしました。
私としては、1歳過ぎるまでは子どもと一緒に過ごしたいと思っていたのですが、自分が思い描いていた理想のタイミングで保育園に預けられないことにストレスを感じました。
入園した保育園は比較的規模が大きくオープンしたばかりの認証保育園だったんですが、園内がずっとザワザワしていて落ち着かない感じでした。「しっかりとうちの子をみてもらえるのかな」という不安感と、「0歳児でまだ一緒にいてあげたいのに保育園に入れてしまってごめんね」という罪悪感で落ち着かない日々でした。
また、実際に仕事と育児を両立させるとなると、送迎のために仕事は時短勤務をしながらも通常勤務時と同じように成果を求めて頑張らないといけないですし、お風呂に入れて、食事をつくって…という感じでせわしない日々が続いていて、いつも余裕がなく息切れしたような状態でした。「誰かが少しだけでも手助けしてくれたら」というモヤっとした感情をずっと持っていました。
こういった一連の悩みは当社の女性社員も、ママ友たちも同じように持っていたようでした。この乳幼児期の子育てと仕事を両立できるように、心に少しでもゆとりがもてるような事業が出来ないかなと思ったのが始まりで、「従業員の育児と仕事の両立支援、沿線に住まう方々の生活向上」を目的にしています。
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