【プログラボ】東京メトロが『教育』をやる理由

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板羽 亮   Ryo Itaba
東京地下鉄株式会社(東京メトロ)
経営企画本部 企業価値創造部 新規事業推進担当

今回のスクスクでは、東京メトロ(東京地下鉄株式会社)が運営する教育サービスの1つ「ロボットプログラミング教育『プログラボ』」についてお話を伺いました。また、本事業を担当する板羽さんご自身も熱心に育児を行っており、1年間の育児休業も取得しています。そのような板羽さんが抱く教育観についても伺いました。

東京メトロが「教育」をやる理由

松原:
最近、大手企業が教育業界へ参入されていますね。東京メトロが「教育」を行う理由について教えていただけますか。

板羽:
はい、まずは「東京メトロがどうして教育をやるのか」の説明の前に、東京メトロの説明をさせていただければと思います。

東京メトロはご存じの通り、東京を中心に鉄道事業を展開している会社です。

「東京を走らせる力」を企業理念として、「東京の都市機能を支え、東京に集う人々の活き活きとした毎日に貢献すること」をお客様にお約束しています。

その企業理念を果たすため、地下鉄9路線の運営を中心に鉄道に関連した事業に力を入れており、駅直結の商業施設やオフィスビルの整備なども行っています。

鉄道は東京に集まる方々の足であり、駅は街の玄関口です。私たちの事業はありがたいことに、コロナ前の2019年度は1日平均700万人以上、コロナ禍の2020年度でも1日平均約500万人ものお客様にご利用いただいています。

このように多くのお客様にご利用いただいていることから、私たちは根幹事業である鉄道を利用してくださるお客様を中心にサービスを展開してきました。

ただ、もう少し広い範囲で「東京に集う人々に貢献したい」と考えるようになりました。街を作っているのは「人や文化」です。そして、人や文化の根底にあるのは「教育」だと考えています。東京に集まる方々の毎日に貢献するため、未来を担う子どもたちに、質の高い教育を提供したいと考えるようになりました。

また、当社はインフラを提供する企業です。そして、「教育」もまた社会のインフラです。

東京の都市機能を支え、人々に貢献したいと考える私たちにとって、「教育事業」へ進出することはとても自然なことだったと感じています。

1年間の育休取得

松原:
鉄道会社にいながら教育事業に関わることに対して違和感はありませんでしたか?

板羽
そうですね、まず私はもともと鉄道関連事業の部署で駅構内店舗の開発や運営を担当していました。

その部署で働いているときに結婚し、有難いことに子どもを授かりました。丁度、当社では働き方改革の一環で男性でも育児休業を長期間とれる環境がありまして、もともと子どもが大好きだったこともあって、思い切って1年間の育休を取ったんです。

松原:
1年間ですか!会社におけるキャリアという意味で、1年間のお休みをとることに不安はありませんでしたか?

板羽:
会社に制度があっても、男性がこれだけ長期で育休を取る前例はほとんどなかったですし、おっしゃるようにキャリアという面で同期と比較して遅れてしまうことに少し不安は覚えました。しかし、仮に長期で育休を取ったとしても、なにか自分の立場に響くことをするような会社ではないことは分かっていましたし、むしろ、人事部にいた同期をはじめ、周囲に相談したところ、長期取得を応援してくれたこともあり、安心して妻と一緒に育児に専念することを決断しました。

「育休は大変だ」「仕事をしている方がラクだ」という意見もあるようですが、私も妻も1年間育休を取っていて、二人で分担しながら育児をしていたので寝不足になることも少なかったですし、むしろ本当に楽しみながら育児を行えました。

そして1年後に復職してから「プログラボ」への異動が決まりました。

真意は分かりませんが、男性で1年間の育児休業を取る社員はほとんどいなかったので、ある意味白羽の矢が立った形なのかなと思います。

私にとって、子育てを通じて教育に関心が芽生えていたので教育事業への異動は願ってもないことでした。

ロボットプログラミング教室「プログラボ」とは

松原:
まるで導かれたかのように教育の世界に入られたんですね。それでは、ロボットプログラミング教室「プログラボ」について教えていただけますでしょうか。

板羽:
はい、ProgLab(プログラボ)とは元々は関西を地盤とした2つの企業、ミマモルメ(阪神電鉄100%出資会社)と読売テレビが起こした事業なんです。

地域に根ざす2つの企業が、日本のICT教育の遅れに危機感を抱き「未来を担う子ども達の、夢を実現するチカラを育む」を理念として、立ち上げたロボットプログラミング教室です。

2016年に開校し、2022年1月時点で、全国61教室、約6300名の生徒が在籍しています。

東京メトロは、先ほど述べた通り、東京に集う人々に貢献したい!という企業理念のもと、教育事業を展開していこうと考えたこと、そして教育事業の中で当時課題とされていたのが「ICT教育」であったことからプログラミング教育を展開したいと考えたこと、この2点から様々なプログラミング教室に話を聞きに行きました。

その中でも、地域は違えど、街や人を思い、事業を展開されている阪神電鉄さんに共感し、2018年4月からフランチャイジーとして参加し、東京圏にプログラボの教育を広めさせていただくことになりました。

本当に偶然ですが、JR東日本さんのグループ会社であるJR中央線コミュニティデザインさんも同じ思いを持ち、同じく2018年から事業を開始されています。お互いの会社がプログラボを進めていくことは知らずに阪神さんにコンタクトを取っていたことから、地域を思う会社の行きつく先は一緒なんだなと、妙に感心してしまいました。

松原:
同じ鉄道会社同士が同じ教育事業を行っていることを不思議に思っていたんですが、たまたまだったんですね。

板羽:
はい、私もびっくりしました(笑)。

あと、これも偶然ですが、九州ではJR九州さんのグループ会社もプログラボを展開していて、地域を思い、地域に恩返しをしたい会社の共感を生んで広まっていると感じています。

他社さんと比べていただければわかりますが、1台6万円以上もする世界基準のロボットを1人1台使える環境なのに、入学金や教材費は取らず、月々の月謝も税抜き1万円を切る教室はなかなかないんです。

松原:
習い事をさせたくても経済的な事情で断念せざるを得ないこともありますから、とても有難い取り組みですね。

板羽:
はい、やはりそうはいっても「事業」ですから利益は出さないといけません。1カ月単位で入退会ができるプログラムなんですが、子どもと保護者様からの満足度が高く継続期間が非常に長いのでなんとか「入学金・教材費無し」という取り組みが出来ています。

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松原 吉輝
(株)weclip共同代表。2児の父で教育に深い関心がある。2016年9月にGIVE&GIVE(株)を設立し、EC運営代行、ECコンサルティングサービスを軸に事業を展開する。また2021年に新規事業開発・事業プランニングを専門で行う会社(株)HItoHIを設立。