今こそ夢をもって、夢を語り合おう

井野 旭  Akira Ino
株式会社インフィニティエンタープライズ代表取締役
NPO法人JIYU評議員

今回のスクスクでは、独立系ファイナンシャルプランナーでありながら、東南アジアの子どもたちを中心に、全国から寄付された文房具やランドセルを直接現地までもっていく社会貢献活動も精力的に行なっている井野旭さんにインタビューを実施。現地で感じたことだけでなく、三人姉妹の親として大切にしていることについて伺いました。

【JIYUとの出会い】

西田:
現在、井野さんのされている仕事について教えていただけますか。

井野:
はい。私は2013年より独立系ファイナンシャルプランナーとして仕事をしています。2014年には「一人の人間を独立させたい」という思いから人財派遣会社を設立しました。人生100年時代、健康寿命と今後生活できるだけの資産寿命を限りなくイコールにしていくお手伝いを全国区でさせていただいております。

西田:
JIYUのことも少し教えてもらえますか。


井野:
私はNPO法人JIYUの評議員を務めているのですが、JIYUでは全国の皆様から寄付していただいた文房具やランドセルを直接現地まで赴き、現地の子どもたちにすべて手渡ししています。これまでにベトナム、カンボジア、台湾に行きました。

郵送は一切行っていないのですが、手渡しにこだわっているのは主に輸送コストの問題があります。現地への輸送費は、コンテナ一つで20万円ほどかかるので、それだったら現地にその20万円を届けた方がいいですから。なので、毎回現地に行く時には段ボールの中にランドセルや文房具を制限ギリギリまでパンパンに詰めていきます。

2017年POSTMANプロジェクト ベトナム・小学校

西田:
これはなかなかできることではないと思うのですが、この活動を通してどんなことを感じられているのでしょうか。

井野:
そうですね。最初はボランティアに壁を感じていました。自分が寄付したものがどこかで搾取されているんじゃないかという感覚ですね。なので、ベトナムにランドセルを持って行ったときも「ランドセルを持ってってやるよ」という気持ちでした。

でも実際にベトナムに行って、手渡しする場所までバスで行くとバスから降りた瞬間に800人くらいの子どもたちが駆け寄ってくるんですよね。バイタリティというか力強さを感じました。これは現地に直接届ける、という体験をしないと感じることができないものでした。それと同時に日本の子どもたちは自分の置かれている環境が豊かすぎていて、それが当たり前になってしまっているように感じるんですよね。ベトナムの子どもたちから感じた「生きる力」を日本の子どもたちはきっと持ち合わせていないだろうと思っています。

2019年POSTMANプロジェクト 台湾・小学校

【一人の親として】

西田:
今、日本の子どもの話が出てきましたが、日本の子どもたちに欠けていると感じられる部分はありますか。


井野:
ハングリーさというかハートが弱いと感じますね。ただ、それは間違いなく親の影響です。私は独立系ファイナンシャルプランナーとして多くの子をもつ親と関わってきましたが、その親に「夢はなんですか?」と聞いても答えられない、言えないんですよね。たとえ夢を持っていたとしても「ここで夢を話しても…」というマインドなんですよね。そんな親に育てられている子どもに「夢を持ちなさい」「夢を持った方がいい」と言っても持てるはずがないんですよ。完全に親が子どもにマインドブロックをかけてしまっている状態です。

西田:
私も「夢は何ですか?」と聞かれても即答できないかもしれません。井野さんご自身もお子さんがいらっしゃると聞いています。


井野:
はい。3人の娘がいます。上から中3、中1、小2です。

西田:
お子さんと関わる上で何か大切にされていることはありますか?


井野:
そうですね。「『できない』を言わせない」ということでしょうか。娘に対していつも「大丈夫、必ずできるよ。天才だから」といつも刷り込みをしています。「サブリミナル効果」って本当にあると思っています。人間は習慣で動く動物なので、「できない」ではなく、「できる」思考を習慣付けてあげたいんですよね。「できる」が習慣付いてくると、こんなことやあんなこともできるんじゃないかと思考を広げていき、夢を持つことができます。そうすれば、その夢に向かって何をすることが必要なのかと考え、目の前の目標に落とし込んでいくこともできます。夢と目の前にあることをつなげてあげる、ということですかね。

日本一の実業家である孫正義さんは幼い頃から祖父に「お前は天才だ」と何度も言われて育てられていたそうです。その結果、新聞か雑誌のインタビューで孫さんが話していたのが「昔から「お前は天才だ」と言われて育ってきたので、何か問題に直面したとしても「できない」と考えたことがない」ということでした。

西田:
私も娘が二人いるのですが、井野さんのお考えに非常に共感することが多いです。他にも大切にされていることがあれば教えてください。


井野:
妻と共通認識をもつ、ということですかね。我が家ではすべてお金と結び付けて考えています。そこはもちろん妻も同意の上です。テストで100点を取ったら100円、お手伝いも仕事、ととらえているのでママのお手伝いを一つしたら100円、お手伝いの内容によっては200円、というようにしています。

社会に出てもう長いですが、社会で生きていくには勉強で得られる知識は3番手くらいだと思うんですよ。何より大事なのは「生きる力、思考」、そして「お金を稼ぐ」ということだと思っています。だから、まずはお金を稼ぐってどういうことなのかを家庭の中で行っているということです。

あとは、投資の勉強もしていますよ。本当に簡単なことですが、家庭内で稼いだお金を「お母さん銀行」に預ければ0.03%の利息がつくシステムにしています。小2の娘にはまだ少し難しい話ですが、お金の増やし方も遊びながら学んでいます。2022年の4月から高校の家庭科で金融教育の授業が始まり投資の学習も組み込まれていますが、資産形成のためにお金を増やしていくことが大切なことは20年前から分かっていました。そんな背景もあって上記の「お母さん銀行」を開設して遊びながらお金の共育をしています。

西田:
お子さんたちの反応はいかがですか?


井野:
かなりコミットメントしてきていますよ。長女や次女は100点のところを98点までにしてくれと交渉にくることもあります。目標設定と目標達成を経験してきてます。今後が楽しみです。お手伝いの対価としてお金をもらうことができるのもうれしいようです。

西田:
「お手伝いをするとお金がもらえる」と聞くと、いやらしく聞こえる部分もありそうですが、「働いた分の対価」という考え方でいくとまだ子どものころから社会に出てから誰もが直面する「お金を稼ぐ」ことを学べるのはとてもいいことですね。他にはいかがでしょうか。


井野:
「徹底的に長所しか見ない」というのも大切にしています。人間が生まれてくる確率ってどれくらいか知っていますか?

西田:
うーん、ちょっと分からないです。1000万分の1くらいですか?

井野:
3億分の1と言われているんですよ。例えばサッカーのトーナメントでその一握りの「1」になることてできますか?

西田:
まず、無理ですね(笑)


井野:
そうですよね(笑)だから、そう考えると、人間って生まれてきたことが奇跡で、生まれてきている以上、出来の悪い人間なんていないんですよ。この世に出てきただけですごいことなんです。そう考えると自然と短所には目がいかなくなりますよ。

西田:
私は我が子に対しても、そして教師という立場でいくとクラスの子どもたちに対してもどうしても短所に目がいってしまい、つい口出ししてしまうことがあります。


井野:
私の中でポイントなのは「自立させること」なんですよね。言えば言うほど自立できなくなっていきますから。子どもたちを見ていると私より考える力があるなあと感心する時がたくさんありますよ。子どもが幼い時、寝返りしたり立ち上がったりする時ってあるじゃないですか。少しでもできると思えれば何度も繰り返してやろうとする姿を見て感激したのを今でも覚えていますね。

西田:
ここまで「親」としての井野さんのお話を伺ってきましたが、娘さんたちを叱ることはないのですか。


井野:
それはありますよ!

西田:
「褒めて伸ばす」ことを大切にされているように思ったのでちょっと意外です。


井野:
叱るといっても、私は「愛」と「エゴ」の違いがあると思っています。子どもたちに「あなたが大切な存在だからあなたのために叱っている」ということが伝わっていればそれは「愛」です。ただ、自分が楽をしたいから、自分の思い通りにならないから、といって叱るのは「自分のために」叱っているので「エゴ」ですよね。伝わるわけはありません。
だから愛をもって叱るときはもちろんあるわけです。

【夢をもって、夢を語り合おう】

西田:
このスクスクの記事は今後、教育に関わる先生だけでなく子どもを育てる保護者の皆さんにも見ていただきたいと思っているのですが、そんな「子をもつ親」に向けてメッセージをお願いしたいと思います。


井野:
今日のインタビューの冒頭から触れてきましたが、まずは親が夢をもつこと、夢を思い出すこと、そして夢を子どもと語り合うこと、子どもの夢の話しを聞いてあげることでしょうか。私自身、今、目の前の行動はすべて夢に基づいていますし、間違いなく子どもは親の影響を大きく受けますから。これは長年、独立系ファイナンシャルプランナーをやってきて思うことです。

西田:
井野さんの夢を聞いてみたいです。


井野:
私の夢は「幸せな家庭」です。そのためにはお金と時間の自由が必要なので、その二つを手に入れるための仕組み作りをここまでしてきました。家族で過ごす時間をしっかりとったり、娘の運動会や授業参観には必ず行ったりしたいと思っています。私が小学生のときは運動会のとき、仕事が忙しくて親に来てもらえず近所の人と一緒に食べていました。仕事ならばしょうがない、と思ってはいましたが、本音を言えばやっぱり来てほしかったですよね。だから、同じ思いは娘たちにさせたくないと思っています。今はコロナ禍で運動会も縮小で子どもと一緒にお昼を食べることができないので残念ですが。

西田:
もう、今は午前で運動会を終える学校が増えていますよね。授業参観にも欠かさず顔を出しているんですね。


井野:
はい。私は必ず教室の前から入るようにしています。

西田:
それは先生にとって結構プレッシャーですね(笑)


井野:
後ろから入って、後ろに立っているだけでは子どもの顔が見えないですからね。それから子どもの側に行ってしゃがんでみます。そうすると、後ろに立っている保護者の皆さんも少しずつ子どもの側に来始めるんですよ。「なんだ、みんな行きたいんじゃん」って思いますよ(笑)。せっかく授業を見に来ているんだから子どもの授業中の様子は側でみたいですよね。

西田:
今回のインタビューではJIYUの評議員として世界の子どもたちと信念をもって関わっていること、そして自身のお子さんへの「愛」を感じるエピソードをたくさん伺うことができました。井野さん、ありがとうございました。

井野:
ありがとうございました。

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ABOUT US
西田 雅史
2010年4月〜東京都内公立小学校にて勤務。初任者の頃、『作家の時間(ライティング・ワークショップ)』と出合い、子どもたちが学びを展開していくワークショップのとりこになる。2021年7月、共著『社会科ワークショップ〜自立した学び手を育てる教え方・学び方』を出版。子どもたちが学習のコントローラーを握り、自立して学んでいく姿をどの教科でも実現しようと日々奮闘中。モットーは「徹底的に子ども目線」。まずは子どもの目線まで降りて、子どもたちの声に耳を傾けることを大切にしている。