学校は最強の学び場

学校は最強の学び場

大沢:
これまでのお話から、公立学校という環境下で山下さんは多くの型破りな実践をなされています。今後、この教育界で成し遂げたいことを教えてください。

山下:
正直言って、ありすぎて困るくらいなんです(笑)。大きくまとめると、この4つですね。

(1)学校教員
(2)教育居酒屋
(3)公立から教育を変えていく
(4)就学前教育

もともと教員になった時は、5年で辞めて民間企業に就職しようと思っていたんです。自分の中では、勝手に教員の方が民間企業より立場が下だと思い込んでいました。ところが、いろんな民間企業の方と会うと「あなたがやっているのは、企業でやっていることと変わらないよ」と言われたんです。そこで、民間だからとか、公務員だからとか関係ないんだなということに気付けたんですね。

あとは、尊敬する校長先生から貰った「教員は人を教えているわけだから、教育の専門家として民間企業に対して人材育成の話をすることだってできるはず」という言葉も自分の中でしっくりきましたね。

そんなこんなで、5年で教員辞めようと思っていましたが、5年経つとやりたいことがどんどん増えました。教員やりながら、教員じゃないこともたくさんできるな、という実感があったんです。例えば、音楽会であれば音楽家に、運動会であればスポーツ選手に、という具合にいろんな立場になれる。それだけじゃなく、いろんな場所にも行けるし、いろんな人を呼んで模擬体験もできる。

そんなときにふと思ったんです。学校って何でもできるじゃん!って。だから、学校は最強の学び場なんですよ。

企業の人からも、学校に是非行きたいんだけど、なかなか呼んでもらえないんだよね、という声が多くて。学校教育が大事というのは企業の人もわかっているんですよね。

教育居酒屋を経営したい

それから、教師になる前からずっと描いているのが、将来教育居酒屋を経営することです。

ただ飲み食いするだけじゃなく、地域に根づいたコミュニティというイメージですね。例えば、昼間はシニアの方や、妊婦さんとかお仕事をしていない人が自由に集まって会話できる。夕方には子供たちが集まって、メニュー表から学びたいメニューが選べる。ミニトマトの育て方とか、造形遊びとか。むしろ、子供がメニューを考えちゃうのが理想ですね。夜になると、仕事の終わったお父さんお母さんが教育について語る。そういう語り場を経営してみたいですね。

大沢:
私たちweclipでも、まさに同じことを考えていました。

山下:
小さなコミュニティでもいいと思ってるんです。

それと、もう1つ。

最近自分の仲間がどんどん公立学校を辞めていくんです。私立に行ったり、学校を新設するのでそれに携わったりと、力がある人が抜けていく。だから、昔は公教育にこだわっていたのが、最近はこだわらなくてもいいのかなと思い始めています。

今年は教育委員会に異動して2年目で、管理の仕事がメインです。もちろん、それはそれで大事なのですが、絶対に間違えてはいけない仕事で、ルールや決まりを守るのが仕事です。一方で、昨年はGIGAスクールの担当を任されて、困っている先生方に寄り添い、研修なども0から企画できました。

今やっていることは誰かがやらなければならない仕事ですが、やっぱり自問自答したときに、自分がやりたいのは、決まったことをやるのではなく、何もない状態から新しいものを生み出す仕事なんだよな、と思ったんです。自分じゃないとできないことに取り組みたい。もちろん、与えられた職務にちゃんと向き合って全うする思いはありますが、日々そんな葛藤をもちながら奮闘しています。

公立から教育を変えていきたい

大沢:
以前山下さんは、公立から教育を変えていきたいとおっしゃっていました。その思いは今でも変わりませんか。

山下:
全く同じではないですが、ほとんど変わりません。やっぱり公立から変えていきたい。もちろん、公立からでは変えづらいこともわかっています。だからといって、私立や民間企業だけがやればいいわけじゃない。がらっと変えようと思ったら、どれだけの作業が必要なのか想像できません。それでも、いきなり0を100にできなくても、少しずつでも変えられるのなら、自分のやりたいことを通して楽しく変えていきたい。

色々な選択肢があると思うんです。例えば、私立学校で素晴らしい実践を築き、それを公立学校に伝播させることで価値を与える、というのも1つです。 だけど、個人的には私立には行きたい人が行くのだから、良い教育をできるのは当然でしょ、という発想なんですね。だからこそ、公立から変えていくことに価値がある。

公立に籍を置きながらも、僕だからできる公立での実践があると思っています。以前担任をもった入西小学校での修学旅行や、様々な民間企業の人を呼んだリーダー教育など。今は管理の業務を通して、現場の先生たちから見えづらい新しい視点をもらっている。そうした経験をいかして管理職になれば、見えてくる景色も変わるのかなと思っています。

その先にどうなっていきたいかは今後変わるかもしれませんが、今のところは早めに校長を経験したいと思っています。

坂戸市立入西小学校での取り組み。コロナ禍で中止となった修学旅行を、夜の学校を活用して実施した。

大沢:
山下さんの原動力は、子供たちのために新しいものを生み出し続けていくことなんですね。

山下:
その軸はぶれませんね。やっていて迷った時は、そこに立ち戻るようにしています。

「俺がやっていることは、単に俺がやりたいだけなのか、自分が楽したいとか得したくてやっているのか。それとも、本当に子供たちのためなのか。」

子供たちが社会に出て、生き生きと笑顔で幸せに自己選択できている状態。

そして、学習指導要領の前文にも掲げられていますが「持続可能な社会の創り手」になることにつながっているのか、と言う目標にはちゃんと立ち返るようにしてます。

子供たちが自分らしく、ありのままに、生き生きと活動できる場をつくっていきたいです。

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大沢 彰裕
(株)weclip 共同代表。(株)日立製作所の鉄道部門でセールスやコンサルティングに従事する傍ら、教育支援会社であるweclipを創業。プランナーとして、スクスクのメディア運営など教育支援事業に従事。1児の父。